謎めいた廃屋の真相

登記と現実が交錯する事件

都会の喧騒から遠く離れた、市街化調整区域。そこには田んぼと平地林に囲まれた、時の流れを忘れさせるような広大な土地がありました。一歩足を踏み入れると、歴史を刻んだ数棟の建物が佇んでいました。かつては住居兼ビジネスの管理人室として賑わいを見せていたその場所は、今やゴミ屋敷と化していました。庭は草で覆われ、進入路も雑草と雑木で荒れ果て、普通車が通れるスペースなど見当たらない。まるで昔のまま時間が止まったかのような光景でした。

その廃屋の背後には、深い謎が隠されていました。住まなくなって3年、その場所を訪れる者はほとんどいなかった。相続人の話では、物置きと化した部屋の中には、過去の生活の名残りが散乱しており、一歩も踏み入れられる場所はなかったと言います。

この廃屋の売買を担当することになった私は、先ずは水道の確認から始めました。水が供給されているとのことでしたが、量水器の位置が不明。諦めずに廃材を探し始めると、ひょっとしたところでその存在を確認。更に、排水の経路も謎に包まれていましたが、水音を頼りに用水堀近くを探索し、ついに見つけることができました。

しかし、最も厄介だったのは、建物の登記と現状が合わないという事実。数日をかけて調査した結果、驚愕の事実が明らかに。建物が消滅した後に、滅失登記をせずに新しく建てられた建物が存在していたのです。相続人自身も、この事実を知らず驚きの色を浮かべました。

時が流れ、変わりゆく世界の中で、ひとつの謎を解き明かしたその日。廃屋の売買案件は、私にとって忘れられない経験となりました。

投稿者プロフィール

関谷 真史
関谷 真史
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